前回は試験対策の中でも教材の使い方を中心にまとめてみました。

海事代理士試験の独学について②筆記試験対策

今回は各科目ごとに対策を書いていこうと思います。独自に分析しているものなので、皆様の参考になるかはわかりませんがよかったら読んでみてください。

Contents

試験当日の時間割

1時間目(9:00~10:30)
  科目 配点
憲法 10
民法 10
商法 10
国土交通省設置法 10
2時間目(10:50~11:50)
船員法 20
船員職業安定法 10
船舶職員及び小型船舶操縦者法 20
3時間目(13:00~15:10)
海上運送法 10
港湾運送事業法 10
10 内航海運業法 10
11 港則法 10
12 海上交通安全法 10
13 海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律 10
14 領海等における外国船舶の航行に関する法律 10
4時間目(15:30~17:40)
15 船舶法 20
16 船舶安全法 20
17 船舶のトン数の測度に関する法律 10
18 造船法 10
19 国際航海船舶及び国際港湾施設の保安の確保等に関する法律 10
20 船舶の再資源化解体の適正な実施に関する法律 10

 試験当日の時間割を基にして表をつくってみましたが長いですね。時間が長いですね。朝の9時から夕方の18時近くまで試験が続きます。でも受験生の条件は一緒ですので頑張りましょう。

憲法

 条文の穴埋めや条文の正誤を問う問題がほとんどです。最近は判例の正誤を問う問題も出題されています。しかしどの条文や判例が出題されるかわかりません。対策としては手を広げずにマニュアルにある過去問に絞ったほうがいいと思います。どうしても手を広げたい、時間にゆとりがあるという方は行政書士試験の過去問等が参考になるかと思いますが、ここはマニュアルに専念されることをおすすめいたします。

民法

 条文の穴埋めや条文の正誤を問う問題がほとんどです。最近は判例の正誤を問う問題も出題されています。民法は非常に多くの条文から構成されていて、どの条文から出題されるか見当がつけにくいです。10/240の配点しかありません。ここは海事代理士の試験であって民法の試験ではありません。手を広げずにマニュアルの過去問に専念しましょう。当方は現役の行政書士ですが、本試験で7点でした。この科目よりももっと時間をかけなければいけない科目がありますのでここはさらっといきましょう。

商法

 商法の中でも海商法と言われてる分野から出題されます。条文の穴埋めや条文の正誤を問う問題がほとんどです。しかし、その条文に出てくる用語がなじみのない言葉ばかりで非常にとっつきにくい印象を受けます。共同海損、船荷証券、船舶抵当権といった用語が頻出します。マニュアルを繰り返し解いて用語に慣れていきましょう。

国土交通省設置法

 多肢選択式問題と正誤を問う問題が多く出題されています。国土交通省設置法、国土交通省組織令、国土交通省組織規則、これらの法令を基にして設置された本省内の課を問う問題や、地方運輸局が設置されている都道府県を問う問題が多いです。本省内の各課の所掌事務を問う問題も多く出されています。具体的には本省の総務課が扱う事務を選択させる問題や、地方運輸局の海上安全環境部が扱う事務を選択させる問題が多いです。その各課で扱う事務内容を自分なりに表にまとめて整理していくことをおすすめします。

船員法

 口述試験にも出題される重要科目です。なんとしても8割の得点を目指したいところです。船員法や船員法施行規則等の条文に穴をあけてそれを多肢選択式で出題したり、記述させる問題が多いです。他にも「法第〇条の規定により○○〇として定められている事柄について3つ記述せよ」というような記述式も毎年出されています。マニュアルの内容を完璧にするのはもちろんのこと、試験直前期には口述試験の過去問についても押さえておきたいところです。
 船員法が適用されない船舶の種類と総トン数、海上労働証書の有効期間、船員の労働時間、労働時間の制限を超えて作業に従事させることができるパターン、有給休暇の件、18歳未満の者を使用する場合、就業規則等は頻出しています。口述試験の科目でもあるということを念頭に置きながら得点源にできるようにしたいです。

船員職業安定法

 多肢選択式と文章の正誤を問う問題がほとんどです。船員派遣事業に関する問題が多いです。船員職業紹介許可事業者に関する問題も頻出です。マニュアルに絞って過去問を抑えるだけで大丈夫です。この科目よりも時間をかけなければならない科目があります。

船舶職員及び小型船舶操縦者法

 口述試験にも出題される重要科目です。しっかり取り組みたいところです。8割の得点ができるように目標を設定したいですね。
 海技試験に関する手続き、操縦免許に関する手続きはきちんと押さえたい所です。また、この試験唯一計算問題が出題されます。理解が進めばなんでもないのですが、少し計算するのに時間がかかってしまう割には配点がほかの問題と変わらないという特徴があります。理解が進めば直ぐに解けます。実際に平成26年度の計算問題に至っては知っていれば一瞬で解けてしまう問題でした。
 また、免許、資格の更新要件は何を出題されても解答できるように覚えてしまいましょう。口述試験においても毎年問われていますから。試験直前期には口述試験の過去問も一通り目を通しておくことをおすすめします。それをやることでマニュアルの理解が一層進みます。

海上運送法

 条文に穴をあけてきてその中身を記述させる問題が多いです。近年はそのパターンで一定しています。事業の種類を分けて覚えること、その事業ごとに許可なのか、認可なのか、届け出でいいのか自分で表にまとめて覚えないとこんがらがること必至です。

手書きでも何でもいいので事業ごとに分けてマニュアルに書き込んで整理しましょう。満点を目指せる科目です。

港湾運送事業法

 ここ近年は正誤選択式と多肢選択式の両パターンで出題されています。この科目も事業の種類と定義、事業ごとに許可なのか認可なのか届出なのかを場合を分けて表にまとめることをおすすめいたします。

前回は手書きだったのですが、二回目はパソコンでまとめてプリントしたものをマニュアルに張り付けて整理して覚えました。満点が目指せる科目です。

内航海運業法

 文章の空欄に語句を記述して解答していくパターンで近年は繰り返されています。得点源にしたいところですが、本番でしくじってしまい5点しか取れませんでした。きちんと事業ごとに用語も含めて何をしている事業なのかを押さえる必要があります。語句も正確に記述できるようにしておきましょう。内航運送の定義を事業ごとに分けて覚えてしまいましょう。法第2条の定義はしっかりと理解しましょう。

港則法

 多肢選択式と文章の正誤を問う問題で構成されています。満点を狙う科目です。法第1条は必ず覚えましょう。その1条を念頭にしてください。特定港内における工事、作業、危険物の運搬、特定港付近における工事、作業、危険物の運搬と積込み、私設信号などは頻出しています。港長の指示、許可、海上保安庁長官の指揮なのか届出でいいのか、マニュアルを解きながら整理してください。

海上交通安全法

 多肢選択式と文章の正誤を問う問題で構成されています。この科目は覚えるべき数字がとても多いです。この法律が適用される海域は限られています。私の場合は白地図(日本列島)に自分で航路を書き込んで場所と名前を覚えました。伊良湖水道の場所や来島海峡航路と水島航路の場所を問う問題が多いです。航路に入るルールや船舶の総トン数と長さを問う問題も多いです。総トン数200トンなのか総トン数2000トンなのかひっかけて問われます。しっかりと整理できれば高得点が狙えます。危険物積載船についても押さえておきましょう・

海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律

 覚えにくい科目です。多肢選択式と文章の正誤を問う問題で構成されています。深入りせずにマニュアルに専念しましょう。関係機関が国土交通大臣なのか環境大臣なのか海上保安庁長官なのかというところは頻出ですので把握しましょう。南極海でのことなのか南極海以外の事なのかという問題もよく出ています。

領海等における外国船舶の航行に関する法律

 令和元年度から新たに加わった科目です。マニュアルに載っていません。過去問もありません。今後、この試験に新科目が追加されるかわかりませんが、そんな時はまず条文の「第一章総則」を押さえるべきだと思います。それ以外には条文を読むことくらいしかありません。
 なお、海上保安庁のホームページにこのような案内がありました。
領海等における外国船舶の航行に関する法律ー海上保安庁

この様な資料を参考にするしかありません。それでも本試験で8点取れました。

船舶法

 口述試験にも出題される重要科目です。しっかり取り組みたいところです。8割の得点ができるように目標を設定したいです。日本船舶の範囲、船籍港及び総トン数の測度、総トン数の改測、船舶の新規登録や譲渡の際の手続き、船舶国籍証書に関する問題などが頻出です。条文の穴埋めを記述させる問題や文章の正誤を問う問題が多いです。
 しっかり取り組みたいところですが、この法律は明治時代に制定されているため文語体で書かれています。
 左ノ船舶ヲ以テ日本船舶トス
 一 日本ノ官庁又ハ公署ノ所有ニ属スル船舶
 二 日本国民ノ所有ニ属スル船舶
 慣れるまで大変だとは思いますが、このような条文に穴をあけてその中身を記述させる問題がほとんどです。マニュアルの過去問を繰り返して慣れてください。口述試験の過去問についても直前期に目を通してください。そのことが筆記試験に大いに役立ちます。

船舶安全法

 口述試験にも出題される重要科目です。しっかり取り組みたいところです。8割の得点ができるように目標を設定したいです。重要な条文に空欄を設けてその空欄に入る語句を記述させる問題が多く出されます。特に船舶検査に関する手続きについて細かいところまで出題されています。マニュアルの過去問を繰り返し解きながらテキストにある条文を繰り返し読み込みましょう。
 大切なキーワードとして

 船舶法では「船籍港を管轄する管海官庁」
 安全法では「船舶の所在地を管轄する管海官庁」

 筆者はこれがややこしくて最後まで混乱していました。ここがひっかけで毎年よく出題されています。二つの違いを早い段階で押さえてしまいましょう。また、口述試験にも頻出している「臨時航行検査」「製造検査」「予備検査制度」「製造事業場認定制度」「整備事業場認定制度」「型式承認」については用語ごとに定義を覚えましょう。

船舶のトン数の測度に関する法律

 過去には語句を記入する問題も見られましたがここ数年は多肢選択式の問題が出されています。テキストの条文を読み込みながらマニュアルを繰り返すことで満点が狙えます。覚えるべきことも少ないので得意科目にしてください。

造船法

 穴埋め記述式と文章の正誤を問う問題で構成されています。ここも満点を狙いたいところです。マニュアルを繰り返してテキストの条文を読み込んでください。条文数も少ないです。過去問を見ても毎年同じような問題構成です。

国際航海船舶及び国際港湾施設の保安の確保等に関する法律

 穴埋め記述式で毎年出されています。毎年似たような問題で構成されています。マニュアルを繰り返して満点を狙いたい科目です。空欄に語句を記入する方式ですので正確に漢字で書けるようにしておきたいです。
 船舶指標対応措置、船舶警報通報装置、船舶保安証書、船舶保安規定、船舶保安記録簿、船舶保安管理者、船舶保安統括者という用語は確実に押さえておきたいです。これらが繰り返し出題されています。

船舶の再資源化解体の適正な実施に関する法律  

 令和元年度から追加された科目です。過去問もなければテキストもないので対策の立てようがありませんでした。条文数も非常に多く全ての条文をたかだか10点のために読み込むくらいなら安全法や船舶法、操縦者法に船員法のために時間を費やしたほうがいいです。
 国土交通省のホームページに報道発表としてこのような案内がPDF形式でありました。
報道発表(PDF形式)
概要(PDF形式)

これを直前期に読み込みました。これくらいしか対策はありませんでした。本試験は7点でした。

まとめ 

 マニュアルを繰り返し解くと同時にテキストにある条文を読み込めば合格点に届くと思います。わかりにくいところや似ている用語当は場合分けをしてマニュアルの解答ページに書き込んでしまいましょう。そうすれば船舶の存否を問う問題や届出なのか許可なのか等を問う問題に生きてくると思います。そして直前期には口述試験の過去問に目を通すことで安全法や船員法、船舶法や操縦者法の理解が深まると思います。

ボロボロになるまでマニュアルを使い込んだ時にはかなりの力がついていることだと思います。

 今回は各科目ごとの簡単な対策を書いてみました。これは筆者が実践した方法ですのでこれを実践すれば合格点確実ということを保証できるものではありません。参考になれば幸いです。次回以降は口述試験対策にも触れてみたいと思います。